Free Scenario

 フリー台本置き場


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  • 虫ver.

     成虫になる時、私たちは蛹の中で、あるいは繭の中で、再構築されるのだという。

     私は幼虫だ。何に成るのかもわからない、柔らかく、ただ葉を貪るだけの幼虫。
     こんな私でも、いずれは何かに成るようだ。
     蝶だろうか、蛾だろうか。それとも、全く別の何かだろうか。
     いずれにせよ、私は一度、私を失い、新たな私に生まれ変わるのだ。
     だからこそ、私は。一度失われる私のうちには、大切なものを作らないと決めた。
     忘れるのが怖いのだ。自らが愛したものを。手放したくないと願ったものを。
     忘れられるのが怖いのだ。自らが愛したものに。手放したくないと願ったものに。
     私でいるうちは、孤独であっても構わない。新たな私になった暁には、沢山のものを愛し、胸に抱えよう。それだけが、孤独な私の救いになった。


    蝶ver.

     成虫になる時、私たちは蛹の中で、あるいは繭の中で、再構築されたのだという。

     私は蝶だ。青みがかった翅を持ち、空に揺蕩うひとひらの蝶。
     そんな私は、一度私を失っているらしい。
     何も覚えていないのだ。失う前の私を。
     私には、大切なものがあったのだろうか。愛したものが。手放したくないと願ったものが。
     もし、私を失い、それらも同時に失っていたのだとしたら。私は、新たに何かを愛する資格があるのだろうか?
     愛したものを忘れた私に。手放してしまった、私に。
     私たちは、皆同じように忘れていく。
     それならば、私は。かつて愛したものだけを抱えよう。今はもう、忘れてしまったけれど。
     きっと、沢山の何かが私を愛してくれていた。
     それだけが、孤独な私の救いになった。